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ソマティック・エクスペリエンシング®療法とは

ソマティック・エクスペリエンシング®療法とは

ソマティック・エクスペリエンシング®(Somatic Experiencing®; SE™)療法とは、アメリカのピーター・ラヴィーン博士によって体系化されたトラウマ・セラピーであり、身体心理学の手法の一つです。身体感覚に注意を向けることにより、私たちが本来持っている自己治癒力を引きだし、症状の癒しをはかります。 「ソマティック」は「身体の」、「エクスペリエンシング」は「経験」という意味ですから、「ソマティック・エクスペリエンシング」を直訳すると「身体の経験」となります。 言いづらい長い名前ですので、「SE(エスイー)」と略して呼ばれることもあります。 このセラピーは、無理に症状や状態を変えようとするのではなく、クライエントさんの身体が進める自然で本能的なプロセスにしたがうものです。そのため、非常に効果が高いにもかかわらず、副作用が少ないことが特徴です。 また、理性で変化を起こそうとするのではなく、本能的な回復力を活用するのも特徴です。つまり、分析したり、考え方を変えたり、洞察を求めたりということはせず、身体の感覚に注意を向けつづけていきます。そうすることで、まず身体(生理反応)が変わり、結果としてものの考え方や感じ方、行動も変化します。 ピーター・ラヴィーン博士は、野生の餌動物(たとえばシカなどの草食動物)は、捕食動物(たとえばライオンのような肉食動物)から日々命をねらわれ、襲われているにもかかわらず、なぜ深刻なトラウマの犠牲にならずにすんでいるのか、という問いから研究を始めました。 そして、25年以上に及ぶ研究の結果、次のようなことを見出しました。

  • 人間も含めた動物は、命の危機に直面したとき、本能的に大量のエネルギーを作り出す。それを使って、逃げたり闘ったりして生き延びる確率を高める。
  • 逃げることも闘うこともできないとき、本能的に「凍りつき」反応が選ばれることがある。その場合、動物はまったく動けなくなるので、作り出されたエネルギーは使われないまま体内に残る。
  • 野生動物は、凍りつきから生き延びたとき、身体を震わせることでそのエネルギーを放出し、神経系を生理的にリセットする。
  • 人間も危機に際して同じようにエネルギーを作り出し、「逃げる」「闘う」「凍りつき」のどれかの反応が本能的に選ばれる。野生動物と違うのは、凍りつきに入り、その後、助かった場合である。人間は野生動物のように震えてエネルギーを放出することをせず、エネルギーを体内に残したまま日常生活に戻ることが多い。つまり、自律神経系が過剰に活性化し、バランスを崩したまま日常生活を送ることになる。
  • トラウマとは、出来事そのものではなく、出来事が引き金となって生み出されたエネルギーが身体内部に残っていることで生じる生理現象のことである。
  • トラウマの症状は、放出されようとする体内のエネルギーとそれを閉じ込めようとする身体の生理反応によって形成される。
  • トラウマの症状を癒すためには、話をしたり気づきを得たりという心理的プロセスだけでは不十分であって、体内に閉じ込められているエネルギーを放出させ、自律神経系のバランスを取り戻す生理的プロセスが必要である。

ソマティック・エクスペリエンシング®療法は、これらに基づいて体系化されたセラピーであり、未放出のエネルギーを放出させ、未完了の本能的なプロセスを完了させることをめざすものです。

ソマティック・エクスペリエンシング®療法によるセッション

人間の脳は、爬虫類脳(本能)、哺乳類脳または辺縁系(感情)、人間脳または新皮質(理性)の3つに分けることができます。 ソマティック・エクスペリエンシング®療法では、本能をつかさどる爬虫類脳にアクセスします。 爬虫類脳が理解するのは言語ではなく感覚ですので、アクセスは身体の感覚を感じること(フェルトセンス)によって行います。 セッションでは、身体の内部の感覚に注意を向け、ただそれを体験していただきます。起こってくる感覚にただ気づき、観察し、味わい、その変化についていきます。 起こってくる感覚には、たとえば、おなかが温かい、指先が冷たい、手のひらがチリチリする、肩に力が入っている、胸のあたりにモヤモヤした感じが広がっている、胃がせりあがってくる、などのようなものがありますが、これらはほんの一例にすぎません。 これを感じるべきだという「正解」はありませんし、そんなことを感じるのは「間違い」だということもありません。何を感じても大丈夫です。 「こんなことを感じたい」と期待したり、「こう感じるべきだ」と無理したり、「こんなことは感じたくない」と避けすぎたりすることは、プロセスの妨げとなります。また、たとえば胃にむかつく感じを覚えた時、「これは昨日食べ過ぎたからだ」などと解釈したり分析したりすることも必要ありません。 現代社会に暮らす私たちのほとんどは、解釈やコントロールをせずに身体感覚にゆっくりと注意を向ける体験に慣れていません。セッションでは、その練習も含めて、ゆっくりと丁寧に進めていきます。 セッションを進める上で最も大切なのは、恐怖や痛みなどの不快な身体感覚に圧倒され、トラウマの再体験になってしまうことのないように、プロセスを少しずつ安全に進めるということです。 「癒しのプロセスは、劇的でなければないほど、またゆっくりと起これば起こるほどより効果的である」とピーター・ラヴィーンは言っています。 セラピストの役割は、安全で安心できる場をつくり上げることと、プロセスが急激に進みすぎることを防ぎ、安全なペースで行われるようにサポートすることです。

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